【2582】第十三章 「戸惑う想い」 |
「な、hyde」
ぼんやりと、窓から見を乗り出して青空を眺めていたhydeに、tetsuがそっと呼びかけた。 「何?」 口元に緩く笑みを浮かべて、応える。空から視線は外さずに。 そんなhydeの華奢な背中を、tetsuが優しく包み込んだ。 「どぉしたん?」 困ったようなhydeの声に、tetsuは瞼を伏せ、静かに言った。 「俺は、ここに居るからさ。 星夜とか、kenちゃん、ゆっきーを、街まで帰してやってくれん? それにあの二人・・・・蝶と愛羅も。元に戻して、ちゃんと自由にしたってや。何や、可哀想や。あんな人形みたいになってもうて」 お前かて望んではおらんやろ?と小さく呟いて、tetsuは薄く目を開いた。 彼の黒く純粋な瞳は、その優しさゆえに傷付いているように見えた。 その所為か、hydeは困惑した。 「tetsu・・・・ええの?ほんとにそれでええの?」 首だけ動かしてなんとかtetsuと目線を合わせる。 その口から漏れ出る言葉は、行かないで欲しいという想いとは裏腹に、まるでtetsuにここに居るな、と言っているかのようなものだった。 それに一番驚いているのは、他ならぬhyde自身。 『何で・・・?俺は、tetsuに一緒に居て欲しいはずやのに、何でこんな事言ってしまうんや?』 そんな胸中の戸惑いを見透かしたように、tetsuはふっと微笑を浮かべた。 「ええの?そんな事言うたら、俺は星夜達と一緒に帰ってまうで?」 「やっ・・・ダメ!そんなの、ダメや・・・行かんといて!!」 反射的にそう叫ぶ。 同時に、胸の奥に不安を押し込もうとした。 その刹那。 hydeの脳裏に星夜の言葉が蘇った。 「そんなの、貴方の勝手じゃない!tetsuの事なんて、これっぽっちも考えてないじゃない!」 「hyde?」 腕の中で細かく震えだしたhydeに、tetsuが心配そうに声を掛けた。 だが、hydeはまるでその声が聞こえないかのように、虚空を見つめている。 いや、確かに聞こえていなかった。 tetsuの声も、風の吹く音も。 ただ、胸の内に湧き上がった疑問の答えを探していた。 『ここに居て・・・tetsuは、ほんとに幸せなんか?』 漂う沈黙を破ったのは、hydeの震える声。 「tetsu・・・・俺・・・・・」 tetsuの腕を緩く掴んで身を離すと、hydeはベッドに腰掛けた。 そのまま押し黙ってしまったhydeを、tetsuは真直ぐに見つめた。 「・・・・俺、tetsuのこと、幸せにしてあげたいねん。苦しんだりしなくていいように」 下を見たまま、ぽつぽつと言葉を紡ぐ。 「けど・・・ここに居てもらうって事は、tetsuが望んだことやなくて俺が」 「煩いわ」 静かに言って、tetsuはhydeの前に跪いた。 「いいって言うてるやんか。hydeの傍に居るのは俺が望んだ事や」 優しくあやすようなtetsuの言葉に、hydeは何も言えなくなってしまう。けれど、答えの出ない疑問と、もう一つ、湧き上がって来た思いは消えなかった。 「・・・・舞さん、あの二人どうしよう・・・」 星夜は頼り無く呟いた。 星夜、ken、yukihiro、それに舞の四人は、hydeの寝室の扉の見える所まで来ていた。 が、入り口に蝶と愛羅が立っている所為でそれ以上近付けずにいた。 「・・・なぁ、強行突破はどや?」 「ken君、あの扉をどうやって壊すのさ?」 星夜の後ろでは、kenとyukihiroが無責任かつ物騒極まりない会話を繰り広げている。 舞は舞で、 「どうしようかしらねぇ」 とかおっとりと呟いて口元を押さえている。 『もう、自分しか頼れない・・・・・』 ・・・星夜はかなり追い詰められていた。 と、その時、 「・・・きゃああああああっ!!」 広い廊下に、二人の少女の甲高い悲鳴が響き渡った。 |
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2404 序章 「月光」 2001/12/21(Fri)05:27 風城空牙 (size:1911) |
2423 早速のご感想大・感・謝・・・v 2001/12/21(Fri)18:56 風城空牙 (size:907) |
2429 きゃぁ!!(^▽^) 2001/12/22(Sat)04:38 まいちん☆ (size:769) |
2432 第一章 「日常と呼び声」 2001/12/22(Sat)08:51 風城空牙 (size:4217) |
2433 ・・・・なんか長い(爆) 2001/12/22(Sat)09:03 風城空牙 (size:993) |
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2438 第三章 「月、満ちる時」 2001/12/22(Sat)16:07 風城空牙 (size:4719) |
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2472 幕間「今絡まる運命の螺旋」 2001/12/24(Mon)18:58 風城空牙 (size:5966) |
2497 第五章 「動き出す―――」 2001/12/30(Sun)12:47 風城空牙 (size:4078) |
2498 第六章 「血色の薔薇」 2001/12/30(Sun)17:46 風城空牙 (size:3106) |
2507 明けまして↓ 2002/1/1(Tue)16:29 風城空牙 (size:1592) |
2514 第七章 「月が沈み日が昇る」 2002/1/2(Wed)10:42 風城空牙 (size:4789) |
2518 第八章 「求める理由」 2002/1/3(Thu)11:39 風城空牙 (size:5582) |
2519 第九章 「抑え切れない力」 2002/1/4(Fri)09:34 風城空牙 (size:4120) |
2547 わーい \(^〇^)/ 2002/1/8(Tue)19:12 風城空牙 (size:862) |
2554 第十章 「眠れる森の――」 2002/1/9(Wed)18:51 風城空牙 (size:5635) |
2559 第十一章 「その感情の名前」 2002/1/10(Thu)18:28 風城空牙 (size:2948) |
2560 続・ねぇねぇ。 2002/1/10(Thu)18:43 風城空牙 (size:828) |
2566 第十二章 「覚醒を待つ心」 2002/1/13(Sun)08:12 風城空牙 (size:2444) |
2568 幕間 「笑顔」 2002/1/13(Sun)08:21 風城空牙 (size:2405) |
2582 第十三章 「戸惑う想い」 2002/1/16(Wed)18:44 風城空牙 (size:2935) |
2595 第十四章 「正反対の気持ち」 2002/1/20(Sun)11:17 風城空牙 (size:3375) |
2612 遅くってごめんなさい(汗) 2002/1/27(Sun)12:45 風城空牙 (size:839) |
2613 幕間 「祈りに似た言葉」 2002/1/27(Sun)12:47 風城空牙 (size:1081) |
2614 第十五章 「迷いを捨てた胸に在るモノ」 2002/1/27(Sun)12:53 風城空牙 (size:3185) |
2626 第十七章 「サヨナラと約束」 2002/2/19(Tue)20:58 風城空牙 (size:2752) |