【2568】幕間 「笑顔」 |
このまま 捕まえていていいですか?
離さなくても いいですか? できる事なら 赦されるなら あなたと二人 永遠に―――――――― 「・・・hyde、て呼んでええ?」 「・・・ええよ」 空高く上がった太陽の光が、眩しく窓辺に降り注ぐ。 その白い光に照らされて、hydeの白い肌が一層白く見える。 風に散らされた黒い髪が、その頭に置かれたtetsuの手をくすぐっていく。 hydeはtetsuの膝の上が気に入ってしまったらしく、そこから動こうとしなかった。 その白い頬にはうっすらと赤い痕がついている。涙の伝った痕だ。 hydeはtetsuの長い指をしっかりと掴んでいた。 ちゃんと掴んでいないと消えてしまいそうで不安らしい。 それを聞いて、tetsuは思わず 「何や、思ったよりもずっと子供じみてるんやね」 と言ってしまった。 hydeは顔を真赤にして、何か言おうと口をぱくぱくさせたけれど、結局何も言わずに大人しくしていた。 「・・・tetsu」 「ん?何?」 呼ばれて見下ろすと、冷たい両手に顔を包まれ、ぴたっと目が合う。 hydeの瞳は深い渕のようだとtetsuは思う。暗いくらい深淵。底の見えない湖。ただ、そこに漂う水は鮮やかな赤色をしているけれど・・・・・。 「な、やっぱり・・・帰りたい?」 少し震えた声で、hydeが囁く。 「tetsuは、皆の所に帰りたいんか?」 不安そうに揺れる瞳を覗き込んで、tetsuは薄く笑った。 「・・・一緒に居るよ。離さへんって、言うたやんか」 言いながらhydeの手を取って、その甲に口付ける。冷たい感触。切ないくらいに。 「・・・・tetsuの唇は、温かいなぁ」 「は!?」 苦笑混じりに言われた言葉に、tetsuの顔が真赤になった。 「・・・・イキナリ何を言い出すんや」 軽くhydeを睨みつけて低く言う。 hydeは悪びれた様子もなく、クスクス笑った。 「なんか、心の奥がほわってするねん。そうやって、手ぇ握って貰ってるだけでも、温かくなんねん」 言って、hydeはむくっと起き上がった。 じぃっとtetsuの可愛らしい顔を覗き込む。 「な、何・・・・?」 大きな赤い瞳に映った自分と目が合って、tetsuは妙な気分になりながら引きつった笑みを浮かべた。 「・・・・・ね、tetsu」 「はいっ!?」 「何でそんなビビるねん自分・・・・」 オーバーリアクションをしたtetsuに、ちょっと傷付くわぁ、と呟いて、hydeが下を向く。 それが何だか可愛くて、tetsuは慌てた。 「ご、ごめんなhyde!泣かんといて・・・」 「・・・・泣いてへんよ?」 必死に慰めようとしたtetsuの顔を上目遣いに見ながら、hydeは引っかかったぁ、と赤い舌を出した。 そして騙されたぁ、と沈むtetsu(笑) それを見て、hydeは楽しそうに声を出して笑った。無邪気な子供のような笑顔で。 つられてtetsuも笑った。 しばらく、二人の笑い声だけが部屋に響いた。 その時、hydeの心にあった感情は「楽しい」というものだけでは無かった。 tetsuは、気付かなかったけれど。 |
【ツリー構成】 〔このツリー(2404)の投稿を全て表示する〕
2404 序章 「月光」 2001/12/21(Fri)05:27 風城空牙 (size:1911) |
2423 早速のご感想大・感・謝・・・v 2001/12/21(Fri)18:56 風城空牙 (size:907) |
2429 きゃぁ!!(^▽^) 2001/12/22(Sat)04:38 まいちん☆ (size:769) |
2432 第一章 「日常と呼び声」 2001/12/22(Sat)08:51 風城空牙 (size:4217) |
2433 ・・・・なんか長い(爆) 2001/12/22(Sat)09:03 風城空牙 (size:993) |
2437 第二章 「狂気に似ている」 2001/12/22(Sat)15:58 風城空牙 (size:4368) |
2438 第三章 「月、満ちる時」 2001/12/22(Sat)16:07 風城空牙 (size:4719) |
2458 第四章 「邂逅」 2001/12/23(Sun)11:45 風城空牙 (size:4516) |
2459 ・・・・・どうしよ(自爆) 2001/12/23(Sun)12:09 風城空牙 (size:1064) |
2472 幕間「今絡まる運命の螺旋」 2001/12/24(Mon)18:58 風城空牙 (size:5966) |
2497 第五章 「動き出す―――」 2001/12/30(Sun)12:47 風城空牙 (size:4078) |
2498 第六章 「血色の薔薇」 2001/12/30(Sun)17:46 風城空牙 (size:3106) |
2507 明けまして↓ 2002/1/1(Tue)16:29 風城空牙 (size:1592) |
2514 第七章 「月が沈み日が昇る」 2002/1/2(Wed)10:42 風城空牙 (size:4789) |
2518 第八章 「求める理由」 2002/1/3(Thu)11:39 風城空牙 (size:5582) |
2519 第九章 「抑え切れない力」 2002/1/4(Fri)09:34 風城空牙 (size:4120) |
2547 わーい \(^〇^)/ 2002/1/8(Tue)19:12 風城空牙 (size:862) |
2554 第十章 「眠れる森の――」 2002/1/9(Wed)18:51 風城空牙 (size:5635) |
2559 第十一章 「その感情の名前」 2002/1/10(Thu)18:28 風城空牙 (size:2948) |
2560 続・ねぇねぇ。 2002/1/10(Thu)18:43 風城空牙 (size:828) |
2566 第十二章 「覚醒を待つ心」 2002/1/13(Sun)08:12 風城空牙 (size:2444) |
2568 幕間 「笑顔」 2002/1/13(Sun)08:21 風城空牙 (size:2405) |
2582 第十三章 「戸惑う想い」 2002/1/16(Wed)18:44 風城空牙 (size:2935) |
2595 第十四章 「正反対の気持ち」 2002/1/20(Sun)11:17 風城空牙 (size:3375) |
2612 遅くってごめんなさい(汗) 2002/1/27(Sun)12:45 風城空牙 (size:839) |
2613 幕間 「祈りに似た言葉」 2002/1/27(Sun)12:47 風城空牙 (size:1081) |
2614 第十五章 「迷いを捨てた胸に在るモノ」 2002/1/27(Sun)12:53 風城空牙 (size:3185) |
2626 第十七章 「サヨナラと約束」 2002/2/19(Tue)20:58 風城空牙 (size:2752) |