【2566】第十二章 「覚醒を待つ心」 |
「落ち着いた?」 tetsuは優しく言った。 けれど、その肩にしがみ付いて泣きじゃくっているhydeはぶんぶんと首を振り、 「まだっ。まだまだやぁっ」 と手にさらに力を込めた。 子供、それも駄々っ子のようなhydeに、tetsuはふっと微笑んだ。 それに気付かず、hydeは嗚咽混じりにか細く言った。 「このまま、離さんといて。ずっと、ずぅっと傍に居って」 お願い、と潤んだ赤い瞳に上目遣いに見つめられて、tetsuはhydeを言いようのないくらいに愛しいと感じた。 「・・・・解った」 そしてそれほど長身でも逞しくもない自分より、さらに小柄で細い身体を優しく抱き締め、 「解ったから、泣いててええよ。絶対、離さへんから・・・」 穏やかに言い聞かせた。 眠れないと泣く子供を、あやすように・・・・・・・・。 「ほらkenちゃん、yukihiro君!tetsuを追い掛けるよ!」 言って星夜は客室を飛び出そうとして、 「ちょっとお待ちなさい」 「ぐえっ」 さりげなく舞に服の襟元を掴まれ、情けない鳴き声を出してしまった。 「ちょ、舞!」 「星夜ちゃんが死ぬ!」 慌てるkenとyukihiro。と、それに構わず星夜を引きずって椅子に座らせる舞。 「っゴホゴホ、ちょっと何するんですか舞さんっ、ゲホッ」 喉元を押さえて、涙目で訴える星夜に、舞はにやりと人の悪い笑みを浮かべた。 「今行っても、邪魔やーって追い返されるだけですわ。妾がhydeが寝たきりだって言った時のtetsuさんの顔、凄かったもの」 あっと言う間に出て行ってしまったし、と付け加えて、舞はころころと笑った。 「そんな事言ったってぇ・・・・(舞さんってこんな凶悪な人だったかしら?)」 机に突っ伏して唸る星夜。 そこに、kenとyukihiroが助け舟を出す。 「ま、星夜の気持ちも解るで」 「tetsu君だって起きたばかりだしね」 二人に言われて、星夜も少し落ち着いたようだ。 ゆっくりと顔を上げる星夜を見て、舞がふと思い出したように口を開いた。 「そう言えば、あの女の子達はどこに行ったのかしら」 女の子達、というのは勿論蝶と愛羅の事で、二人はhydeの寝室の前で人形のように真直ぐに立っていた。 お互いに、何も言わず、何もしない。 二人の共通点はhyde――主人への絶対の忠誠。 そのhydeの客人であるtetsuが出て行けと言えば、それは主人の言葉と同じで絶対的な命令だ。 逆らう事は許されない。 否、逆らう、などと考える事もない。 自我が無いのだから。 ただ、hyde自身の心が変わり始めた所為で、二人への支配も弱まり始めていた。 それを表すかのように、蝶がぽつりと呟いた。 「・・・・愛羅、あたし、帰りたい・・・・」 「・・・・私も、帰りたいわ、蝶・・・・」 蝶の言葉に触発されたように、愛羅も小さく呟く。 だがそれも一瞬の事で、一度口を閉ざした二人がまた言葉を放つ事は無かった。 囚われの人形 その心が 目覚め始めた 彼の心の変化に 呼応するように・・・・ |
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2404 序章 「月光」 2001/12/21(Fri)05:27 風城空牙 (size:1911) |
2423 早速のご感想大・感・謝・・・v 2001/12/21(Fri)18:56 風城空牙 (size:907) |
2429 きゃぁ!!(^▽^) 2001/12/22(Sat)04:38 まいちん☆ (size:769) |
2432 第一章 「日常と呼び声」 2001/12/22(Sat)08:51 風城空牙 (size:4217) |
2433 ・・・・なんか長い(爆) 2001/12/22(Sat)09:03 風城空牙 (size:993) |
2437 第二章 「狂気に似ている」 2001/12/22(Sat)15:58 風城空牙 (size:4368) |
2438 第三章 「月、満ちる時」 2001/12/22(Sat)16:07 風城空牙 (size:4719) |
2458 第四章 「邂逅」 2001/12/23(Sun)11:45 風城空牙 (size:4516) |
2459 ・・・・・どうしよ(自爆) 2001/12/23(Sun)12:09 風城空牙 (size:1064) |
2472 幕間「今絡まる運命の螺旋」 2001/12/24(Mon)18:58 風城空牙 (size:5966) |
2497 第五章 「動き出す―――」 2001/12/30(Sun)12:47 風城空牙 (size:4078) |
2498 第六章 「血色の薔薇」 2001/12/30(Sun)17:46 風城空牙 (size:3106) |
2507 明けまして↓ 2002/1/1(Tue)16:29 風城空牙 (size:1592) |
2514 第七章 「月が沈み日が昇る」 2002/1/2(Wed)10:42 風城空牙 (size:4789) |
2518 第八章 「求める理由」 2002/1/3(Thu)11:39 風城空牙 (size:5582) |
2519 第九章 「抑え切れない力」 2002/1/4(Fri)09:34 風城空牙 (size:4120) |
2547 わーい \(^〇^)/ 2002/1/8(Tue)19:12 風城空牙 (size:862) |
2554 第十章 「眠れる森の――」 2002/1/9(Wed)18:51 風城空牙 (size:5635) |
2559 第十一章 「その感情の名前」 2002/1/10(Thu)18:28 風城空牙 (size:2948) |
2582 第十三章 「戸惑う想い」 2002/1/16(Wed)18:44 風城空牙 (size:2935) |
2595 第十四章 「正反対の気持ち」 2002/1/20(Sun)11:17 風城空牙 (size:3375) |
2612 遅くってごめんなさい(汗) 2002/1/27(Sun)12:45 風城空牙 (size:839) |
2613 幕間 「祈りに似た言葉」 2002/1/27(Sun)12:47 風城空牙 (size:1081) |
2614 第十五章 「迷いを捨てた胸に在るモノ」 2002/1/27(Sun)12:53 風城空牙 (size:3185) |
2626 第十七章 「サヨナラと約束」 2002/2/19(Tue)20:58 風城空牙 (size:2752) |