【2519】第九章 「抑え切れない力」 |
俺は 独りは嫌い こんな 暗い場所も嫌い だから 相容れぬ物だと 解っていても 眩しい光に 焦がれた・・・・・・ ・・・・どくん・・・・・・ 「hydeさん、tetsuを元に戻して!!」 ・・・・どくん・・・・・・ 「イヤや。そんな事したら、三人ともtetsuを連れてすぐ逃げる気やろ」 ・・・・どくんっ・・・・・ 「それが解ってんのにっ・・・・」 「hydeさんっ!?」 急に胸を抑えて床に崩れ落ちたhydeに星夜は駆け寄った。 「hydeさん?大丈夫!?」 星夜の声も、カタカタ震えているhydeには聞こえていないようだった。 緋色の目が、ただ大きく見開かれて、何も無い虚空を映している。 白い肌にじっとりと汗が浮かんで、呼吸の音さえ痛く響く。 『・・・・魔力を抑えきれなくなったのだわ』 hydeの傍に降りて来た舞が、冷静に言った。 『自分の限界以上の力を扱おうとするからこうなるのよ?』 「・・・・っるさいわ・・・・くっ」 舞をじっと睨み上げてhydeは掠れた声を押し出した。 「・・・なぁ、あんまりゆっくりしてる暇、ないんとちゃうか?」 「このままだと本当に魔力が暴走するよ」 kenとyukihiroが辺りを見回して言った。 hydeの力のバランスが崩れて、何時の間にか五人は赤い炎を打ち消して燃え上がった青い炎に囲まれていた。 「妖魔。この火、早う消せや」 「・・・うるさいって・・・言うてるやろ。それにっ、俺には・・・名前が、あるわ」 溢れ出しそうな力を必死に抑えながら、hydeはkenを睨みつけた。 「俺やって・・・そうしたい、これ以上は限界や。 けど、集まった魔力は・・・・簡単には消えないんや」 「じゃあどないするんや!?」 『・・・その為に妾が居るのよ』 すいっとkenの横に浮かんで、舞はにっこりと微笑んだ。 『hyde。貴方の魔力・・・・妾が頂くわ』 言って、舞は細い両腕を左右に広げた。 その刹那、暗かった部屋が真っ白な光に満ちた。 hydeは光の中で意識を手放した。 「・・・・・何?何が起こったの?」 瞼を閉じてもなお眩しかった強い光の所為で痛む両目を押さえながら、星夜が言った。 目隠し状態で歩き出そうとして、 「痛っ」 何かに躓いた。 「何すんのや!前見て歩け星夜!」 「あ、ご、ごめんkenちゃん」 「大丈夫?星夜ちゃん、目を見せて」 yukihiroに言われて、星夜は両手をそっと離した。 すると、温かい黄緑色の光が目の前を包んで、痛みが無くなった。 「・・はい。もう大丈夫だよ」 「本当、痛くないよ!ありがとうyukihiro君!・・・今のも神術?」 「そうだよ」 「便利やなぁ、神術って。ゆっきー、今度俺にも教えてや」 「それは無理だよken君。君には資質って物が無いなってこの間父さんに言われたじゃない」 「あ゛――――っ!そやった!」 悔しげに叫ぶken、その背後にゆらっと人影が立った。 「お話はもう終わりかしら?」 「あれ?・・・・舞・・・さん?」 そこに立っていたのは、実体に戻った舞だった。 身体を取り戻した舞は柔らかく微笑んでいた。 衣服や髪に小さな薔薇を飾っているその姿は、どこか少女めいて可愛らしい。 「hydeの魔力が思っていたより強かったけれど、何とかなって良かった。 そのおかげで妾も実体を取り戻せたのだもの」 言いながら舞は長い黒髪を無造作に編み始めた。 「残る問題は・・・・」 「どうやってあの頑固者にtetsu君を元に戻させるか」 「やな」 「・・って、hydeさんはっ!?」 星夜はばっと立ち上がると、大きなベッドの前の辺りに向かった。 案の定、hydeはそこに倒れこんでいたが。 「・・・・tetsu?何してるの?」 星夜が驚いたのは、hydeの頭をtetsuが優しく撫でているのを見たからだ。 『・・・・・・・・可哀想なhyde。 私がもっと強い女であれば、この子にこんな思いはさせずに済んだのに。 私が遺して逝かなければ、この子は人のままでいられたのに・・・・・・』 tetsuの口から出て来た声が女性の物だったので、星夜はさらに驚いて目を丸くした。 「てっ、tetsu――――っ!!!どうしちゃったの――――!!?」 取り乱す星夜にひたと視線を向けて、tetsuは静かに言った。 『お嬢さん、私は貴女の知っているtetsuではないのです。 私は、ずっと昔にこの樹海で骸となった・・・この子の母』 「はは!?」 『ええ。 私はあれから何度も転生を繰り返していました。 今またこうしてこの子を撫でてあげられるなんて、夢のようです・・・・・』 そう言ってhydeを見つめるtetsuの目は、確かに優しい母親のそれに似ていた。 『・・・もう、この子は大丈夫。貴女達の言葉で、hydeの心を開いてあげて下さい』 「・・・・って、tetsu!!」 すうっと目を閉じたかとおもったらいきなり倒れたtetsuに、またも星夜は驚かされた。 その時、星夜は気付かなかった。 hydeの閉じられた瞳から、一滴だけ涙が零れた事に。 『母様・・・・・・・』 温かい光 遠退いて行く光 逝かないで 俺を ひとりにしないで・・・・・ |
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2404 序章 「月光」 2001/12/21(Fri)05:27 風城空牙 (size:1911) |
2423 早速のご感想大・感・謝・・・v 2001/12/21(Fri)18:56 風城空牙 (size:907) |
2429 きゃぁ!!(^▽^) 2001/12/22(Sat)04:38 まいちん☆ (size:769) |
2432 第一章 「日常と呼び声」 2001/12/22(Sat)08:51 風城空牙 (size:4217) |
2433 ・・・・なんか長い(爆) 2001/12/22(Sat)09:03 風城空牙 (size:993) |
2437 第二章 「狂気に似ている」 2001/12/22(Sat)15:58 風城空牙 (size:4368) |
2438 第三章 「月、満ちる時」 2001/12/22(Sat)16:07 風城空牙 (size:4719) |
2458 第四章 「邂逅」 2001/12/23(Sun)11:45 風城空牙 (size:4516) |
2459 ・・・・・どうしよ(自爆) 2001/12/23(Sun)12:09 風城空牙 (size:1064) |
2472 幕間「今絡まる運命の螺旋」 2001/12/24(Mon)18:58 風城空牙 (size:5966) |
2497 第五章 「動き出す―――」 2001/12/30(Sun)12:47 風城空牙 (size:4078) |
2498 第六章 「血色の薔薇」 2001/12/30(Sun)17:46 風城空牙 (size:3106) |
2507 明けまして↓ 2002/1/1(Tue)16:29 風城空牙 (size:1592) |
2514 第七章 「月が沈み日が昇る」 2002/1/2(Wed)10:42 風城空牙 (size:4789) |
2518 第八章 「求める理由」 2002/1/3(Thu)11:39 風城空牙 (size:5582) |
2519 第九章 「抑え切れない力」 2002/1/4(Fri)09:34 風城空牙 (size:4120) |
2547 わーい \(^〇^)/ 2002/1/8(Tue)19:12 風城空牙 (size:862) |
2554 第十章 「眠れる森の――」 2002/1/9(Wed)18:51 風城空牙 (size:5635) |
2559 第十一章 「その感情の名前」 2002/1/10(Thu)18:28 風城空牙 (size:2948) |
2560 続・ねぇねぇ。 2002/1/10(Thu)18:43 風城空牙 (size:828) |
2566 第十二章 「覚醒を待つ心」 2002/1/13(Sun)08:12 風城空牙 (size:2444) |
2568 幕間 「笑顔」 2002/1/13(Sun)08:21 風城空牙 (size:2405) |
2582 第十三章 「戸惑う想い」 2002/1/16(Wed)18:44 風城空牙 (size:2935) |
2595 第十四章 「正反対の気持ち」 2002/1/20(Sun)11:17 風城空牙 (size:3375) |
2612 遅くってごめんなさい(汗) 2002/1/27(Sun)12:45 風城空牙 (size:839) |
2613 幕間 「祈りに似た言葉」 2002/1/27(Sun)12:47 風城空牙 (size:1081) |
2614 第十五章 「迷いを捨てた胸に在るモノ」 2002/1/27(Sun)12:53 風城空牙 (size:3185) |
2626 第十七章 「サヨナラと約束」 2002/2/19(Tue)20:58 風城空牙 (size:2752) |