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【2432】第一章 「日常と呼び声」
2001/12/22(Sat)08:51 - 風城空牙 - Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 5.01; Windows 98) - 16817 hit(s)

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最近よく夢を見る
長い髪をなびかせた綺麗なひとが 俺を呼んでいる夢を

  『早く・・・・早く来て・・・・』

唯一色を持っているのは そのひとの瞳だけ
それは 深い深い緋色――――――――――美しい、血の色。




「あんたは・・・誰や・・・?」
夢から覚めないまま、tetsuはもごもごと呟いた。
彼の顔はとても可愛らしく、今年で十六歳になった割には子供っぽさが抜けていない。
けれど、彼がそれを気にすることは無かったし、他人を明るくさせる無邪気な笑顔の元でもあったから、むしろ気に入っていた。
「誰や・・・・」
呟きながらまたも眠りの中へと沈み込んで行くtetsuの意識。それは、一番深い所まで行って、それから急浮上させられた。
寝起きの余りよろしくないtetsuを起こす事を日課としている少女が、時間通りに現れたのだ。

・・・・ダダダダダ、バターンッ!!

「こらtetsu!!起きろ――――っ!!!」

響き渡る、高い元気な声。
勢いに乗って空に舞う、赤みがかった茶の背中まである長い髪。
満面に笑みを浮かべた、すらりと背の高い綺麗な少女。
だが、彼女の台風の如き登場にも動じず(恐らく慣れてしまったのだろう)、tetsuは安眠を貪り始めていた。
「・・・ぐ――――、す――――・・・・」
・・・・一瞬、室内に沈黙が満ちる。が、それは爆弾投下前の、言うなれば『嵐の前の静けさ』であった。
少女の大きな栗色の瞳が、危険な感じにきらりと光る。

ゴンっっ!!!


「なんや、星夜。またtetsuをいじめて来たんか?」
台所に立って朝食の準備をしていた男が、tetsuの部屋から戻ってきた少女にからかうような声を掛けた。
星夜と呼ばれた少女は、男に向けて舌を出し、
「いじめたんじゃないもん。起・こ・し・て、あ・げ・た・の!!」
言って、赤くなった右手を撫でた。
男は星夜の様子を気に掛けるでもなく、手にしたフライパンの中で硬くなっていく卵を器用にも空中で裏返した。
男は名をkenと言い、星夜以上に背が高かった。
年は十八。まだ赤ん坊だった頃に父親を亡くし、十歳の時に母親も病気で死んだ。だから家事全般が大得意だ。
面倒見も良く、自分とtetsuにとっては幼馴染兼、良きお兄さん替わりである。
と言っても、生まれてすぐに両親を亡くしたtetsuはkenの家で一緒に暮らしていた為、もはや父親に近い人物であったかもしれない。
髪は茶色のクセっ毛。整った、だが少し子供っぽい顔には無精髭を生やしている。
彼の黒い瞳はいつもきらきら輝いていて、おもしろい事を思いついた時の子供の眼のようだと星夜は思っていた。
「文句言うなら、kenちゃんが起こしてあげればいいじゃない?」
視線を外して、星夜が言った。
kenは盗み見るように星夜を見、にやりと人の悪い笑みを浮かべた。
「・・・ええんか?」
「な、何よ。良いから言ってんでしょ!」
kenはむきになる星夜を見もせず、テーブルの上に目玉焼きの乗った皿を四人分、並べていく。
が、口だけはしっかりと動かしていた。
「そーんな事したら、大好きなtetsuに朝から会える口実がなくなるで〜♪」
「・・・・・・っ!!!!!」
さっきまでの威勢はどこへやら、星夜は顔を真っ赤にして固まってしまった。
と、玄関口から声がした。
「kenくーん、おはよー」
(はっ、yukihiro君の声だっ!!)
星夜にとっては天の助けである。
「お、おはようyukihiro君っ!!」
と足早に玄関へと逃げて行った。


さて、その頃のtetsuは・・・?

「・・・・・・なんでこんなに頭痛いんやろ・・・・・」
tetsuの頭には、大きなこぶが出来ていた。
毎朝tetsuを起こすのが星夜の日課なら、その星夜に殴られるのがtetsuの日課のようなものだった。
「・・・・・・ま、ええか・・・・」
大きく伸びをして、tetsuはベッドからようやく抜け出した。
起きてしまえばやる事は早い、椅子の上に引っ掛けてあったオレンジ色のシャツとジーンズに手早く着替える。
鏡の前で適当に髪を整え、大きくあくびをしながらドアノブに手を掛け、部屋を出ようと、した。
その刹那。
声が、聴こえた。

「・・・・もうすぐ・・・・満月の夜が・・・・・」

「その時・・・・・君は・・・・・俺の物に・・な・・・・」

「早く・・・・・・俺・・・とへ・・・」

途切れ途切れに頭の中へ響いてきた声は、少しづつ小さくなって、すぐに聴こえなくなってしまった。
「・・・今のは・・・あの人が・・・?」
声の主に尋ねるような口調だったが、tetsuは確信していた。
『今のは、夢で見たひとの声や、あの人は、俺を呼んでるんや』
半ば茫然として、tetsuは胸の前で右手を強く握り締めた。
「満月の夜に・・・俺は、貴方に逢えるんやろか?」
声に出して呟いたtetsuの胸に、『逢いたい』という思いが広がっていった。

    あと幾度太陽が沈めば 満月が訪れる?

    暗い空にきらきら光る 愚かな世界を見下ろし笑う

    銀色の傍観者

    待ち遠しい 待ち遠しい 気が狂いそうなくらい
 
    貴方が俺に逢いたいと望まれるように 

    俺も 貴方に逢いたいと望んでいる 

    これが 運命 というものなんだろうか?





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2404 序章 「月光」 2001/12/21(Fri)05:27 風城空牙 (size:1911)
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2423 早速のご感想大・感・謝・・・v 2001/12/21(Fri)18:56 風城空牙 (size:907)
2429 きゃぁ!!(^▽^) 2001/12/22(Sat)04:38 まいちん☆ (size:769)
2432 第一章 「日常と呼び声」 2001/12/22(Sat)08:51 風城空牙 (size:4217)
2433 ・・・・なんか長い(爆) 2001/12/22(Sat)09:03 風城空牙 (size:993)
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2437 第二章 「狂気に似ている」 2001/12/22(Sat)15:58 風城空牙 (size:4368)
2438 第三章 「月、満ちる時」 2001/12/22(Sat)16:07 風城空牙 (size:4719)
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2458 第四章 「邂逅」 2001/12/23(Sun)11:45 風城空牙 (size:4516)
2459 ・・・・・どうしよ(自爆) 2001/12/23(Sun)12:09 風城空牙 (size:1064)
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2472 幕間「今絡まる運命の螺旋」 2001/12/24(Mon)18:58 風城空牙 (size:5966)
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2497 第五章 「動き出す―――」 2001/12/30(Sun)12:47 風城空牙 (size:4078)
2498 第六章 「血色の薔薇」 2001/12/30(Sun)17:46 風城空牙 (size:3106)
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2507 明けまして↓ 2002/1/1(Tue)16:29 風城空牙 (size:1592)
2514 第七章 「月が沈み日が昇る」 2002/1/2(Wed)10:42 風城空牙 (size:4789)
2518 第八章 「求める理由」 2002/1/3(Thu)11:39 風城空牙 (size:5582)
2519 第九章 「抑え切れない力」 2002/1/4(Fri)09:34 風城空牙 (size:4120)
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2547 わーい \(^〇^)/ 2002/1/8(Tue)19:12 風城空牙 (size:862)
2554 第十章 「眠れる森の――」 2002/1/9(Wed)18:51 風城空牙 (size:5635)
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2559 第十一章 「その感情の名前」 2002/1/10(Thu)18:28 風城空牙 (size:2948)
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2566 第十二章 「覚醒を待つ心」 2002/1/13(Sun)08:12 風城空牙 (size:2444)
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2568 幕間 「笑顔」 2002/1/13(Sun)08:21 風城空牙 (size:2405)
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2582 第十三章 「戸惑う想い」 2002/1/16(Wed)18:44 風城空牙 (size:2935)
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2595 第十四章 「正反対の気持ち」 2002/1/20(Sun)11:17 風城空牙 (size:3375)
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2612 遅くってごめんなさい(汗) 2002/1/27(Sun)12:45 風城空牙 (size:839)
2613 幕間 「祈りに似た言葉」 2002/1/27(Sun)12:47 風城空牙 (size:1081)
2614 第十五章 「迷いを捨てた胸に在るモノ」 2002/1/27(Sun)12:53 風城空牙 (size:3185)
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2626 第十七章 「サヨナラと約束」 2002/2/19(Tue)20:58 風城空牙 (size:2752)
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