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【2666】第3話 異質
2002/10/21(Mon)23:01 - 雪斐。 - Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 6.0; Windows NT 5.1) - 5305 hit(s)

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あれから3年経って街には誰も居なくなった。
けれどhydeは1人で街をぶらついていた。

この世界を1人締めした初めての日。

俺を縛る奴も、軽蔑する奴も誰もいない。
何処か清々しい気分と空虚な優越感が頭の奥を麻痺させるように広がっていった。

別にどうしたい、何てなかった。
行きたい場所もなかった。
ただ1人だけの世界を全て見てみたかっただけかもしれない。


しかしそんな淡い冒険心も一瞬で絶望へと変える生き物がいる。
「おい。動くな。」

hydeは小さく舌打ちすると、言われた通りに足を止めた。
「警察がまだ残ってたなんてな・・・」
吐き捨てるように呟くと、確かに1人の人間が自分の方へ歩み寄る足音が聞こえた。

ところが突然、hydeは背後から来た人間に腕を掴まれ無理やり路地裏へと押し込まれた。

しかしhydeは無意識に強く掴まれた腕を振り払い、振り返る勢いに任せて相手の胸倉を掴んだとき思わず目をはっと見開いた。
「あんたは・・・」
いつか見た警官が苦い顔をして口に人差し指を当てている。
そしてその指がさっきまでhydeがのんびり歩いていた街角を指したので、hydeが視線を向けると、音もなく灰色の機械が赤い光を撒き散らしながら通り過ぎていくのが見えた。

「あいつは頭の悪いほうだ。動くものは感知するけど、音はそれほど敏感じゃない。」
呆気に取られたhydeがまだ目の奥に残っている赤い残像を消し去ろうと小さく俯くと、落ち着いた小声が囁いた。

「どう言うことだ。」
「・・・ここは危険や。こっち・・・」

彼は路地の出口を確認するようにキョロキョロと見渡すと、hydeの質問には答えず、言葉少なめについてくるように促すと足音もたてずに歩き出したので、hydeは仕方なしに追いかけるような形で男の後ろをついていった。



幾つかの路地裏を通り抜け、一つの小さなビルの中へと俺たちは潜り込んだ。
その間にもさっき見た灰色の機械や人間の形をしたロボットの目を盗んでは走ったり止まったりした。



(どうなってるんだ!!)

hydeは自分1人だけが訳の分からない状況に置かれているようで、焦りと苛立ちが区別もつかなくなるほど混乱していた。
けれど久しぶりに会った警官はhydeの何か言いた気な表情を見ては口に人差し指を当てた。

姉以外の人間に指図を受けることはhydeにとって屈辱でしかなかったのだが、少なくとも自分よりは警官の方がこの世界をよく知っていることは嫌でも分かっていたのでhydeは仕方なしに口を噤んだまま何も言わなかった。



ようやく入ったビルの中でも話し掛けることは許されなかった。

このビルは最近まで人が使った、そんな気配は全くなかった。
薄汚れた床に埃が舞い、蜘蛛が巣を張り巡らし、塵が喉へ入り込んで息苦しい・・・

2つの階段を駆け下り、長い廊下を渡り、右へと曲がると最初の部屋に入った。

部屋の中は病院のように無機質で、見たこともないような機械がずっしり居座っていた。
これだけの機械があると狭く感じるが、この部屋は以外と大きいモノだった。
さっきまで通ってきたビルの内装とは違い、塵一つない。
部屋の中央には人、数人がどうにか寝転べる範囲に椅子が3つ、大きめな丸い机が一つだけ置いてあった。

そして驚いたことに奥にはまだ部屋が続いているようだった。

hydeが呆気に取られて部屋を見渡していると、男が大きな溜息をついた。

「もう喋ってええで。」
「・・・どうなってるんだ?今までこんなこと・・・」
随分気を張っていたためだろうか。
男はかなり疲れた様子で少し屈んで傍にあった椅子に腰掛けると、ポケットから小さな四角い機械のようなモノを取り出して再び溜息をついた。

「どうしてまだこんなとこに残っていたんだ。」
初めて男が厳しい顔をした。


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