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【2595】第十四章 「正反対の気持ち」
2002/1/20(Sun)11:17 - 風城空牙 - Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 5.01; Windows 98) - 15548 hit(s)

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「蝶さん、愛羅さんっ!!」
叫んで星夜が駆け出したのと、


「蝶、愛羅!?」
言ってhydeが立ち上がったのは、殆ど同時だった。


hydeが扉を開いた時、蝶と愛羅は座り込んで頭を抱えていた。
すぐ傍に星夜達四人も居た。
皆、苦しげに喘ぐ二人を心配そうに見ていた。
と、hydeに気付いた舞が口を開いた。
「hyde。この子達がどうして苦しんでいるのか、解る?」
穏やかな口調と違い、その顔には厳しい表情を浮かんでいる。
「貴方の心に変化が現れた所為よ。支配が弱まったから、閉じられた心と貴方の植え付けた忠誠心とがぶつかり合っているの。・・・・何をすれば良いか、解るわね?」
じっ、と四対の視線に見据えられて、hydeは軽く頷いて、蝶と愛羅の前にしゃがみ込んだ。
「・・・ご、しゅじ・・・さま・・・」
「あたまが・・・いたいのです・・・」
苦痛に顔を歪めて自分を見上げる少女達に、hydeは胸が痛くなるのを感じた。
『俺の、所為なんやね・・・』
「・・・蝶、愛羅、ごめんな?今、元に戻したるから」
目閉じて、と言われて二人は素直に目を閉じた。
その顔の前に手を翳して、hydeは目を伏せ口の中で呪文を唱えた。
hydeが目を開いた時、淡い青色の光が二人を包んだ。

眩しさに目を覆った星夜が手を離すと、蝶と愛羅は深紅の絨毯が敷かれた床の上に倒れていた。
「hydeさんっ!!何したんですか!?」
慌てて叫んだ星夜を、舞が横から押し留める。
「hydeは二人の支配を解いたのです。少し休めば、二人とも目を覚ますはずよ」
「それなら、二人をちゃんと寝かしとかんとな、ゆっきー」
言った時にはもう、kenは蝶を抱えていた。
その素早さに呆れて苦笑しながら、yukihiroも愛羅を抱える。
「星夜」
「ちゃんとtetsu君返してもらいなよ?」
そう囁いて、二人は客室まで戻って行った。
それを見送ってから、舞が口を開いた。
「hyde、星夜さんはね、tetsuさんを返して欲しいんですってよ?」
「はっ!?」
いきなり言われて、星夜は顔を真赤にした。
「なななななな何言ってるんですか舞さんっ!!」
「だって、帰りたいんでしょう?四人で」
舞は涼しい顔であらぬ方を見る。
「た、確かに帰りたいけど!別にそんな、返してって・・・」
必死に誤魔化そうとする星夜の耳に、ふいに笑い声が聴こえた。聴き慣れた笑い声。
「・・・・何笑ってんのよ」
見れば、tetsuが笑っていた。
その顔を見て、星夜は視界が滲むのを感じた。
「・・・tetsu。星夜、泣いてるで」
hydeに言われて、ようやくtetsuは星夜が泣いている事に気付いた。
「な、何泣いてんねん!どないした?どっか痛いんか?」
「違うよ!・・・嬉しいんだよ、バカ」
「バ、バカとは何や!可愛くないなぁ!」
そのままケンカを始めそうな二人を尻目に、舞はhydeを追って寝室に足を踏み入れた。
hydeは部屋の中程に立ち尽くしていた。
「・・・hyde」
呼んでも、返事は返ってこない。
舞は構わず続けた。
「あの子達・・・帰して、あげるんでしょう?」
背後ではtetsuと星夜がとうとう言い合いを始めた。
それをどこか遠くの出来事のように聞きながら、舞はhydeの言葉を待った。
だが、いくら待ってもhydeが口を開く事はなかった。
「・・・・・もう少しで日が沈むわ。ゆっくり考えなさい」
言って舞はhydeに背を向けた。


扉の閉まる音を聞きながら、hydeは呟いた。
「考えるまでもないやんか。帰すに決まってるやろ」

『本当はまだ迷ってる』

「ここに居ても、tetsuは幸せになんかなれへん」

『行かせたくない』

「tetsuが苦しむより、俺が悲しんだ方がええんや」

『手放したくない』

「煩い!!」
ばん、と強い衝撃と共に壁に皹が入る。
ぱらぱらと破片が舞い落ちる頃には、脳裏に響いていた言葉も聞こえなくなっていた。
「・・・もう決めたんや。迷ったりしない」
言った瞬間力が抜けて、hydeは床に座り込んだ。
身体の震えが止まらない。
今まで感じた事の無い想いが、胸の奥で渦巻いていた。
「何やの?これ・・・苦しい?違う、悲しい?・・・知らへんわ、名前・・・」

―――――泣き出しそうに弱々しい声だった。


      


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