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【2582】第十三章 「戸惑う想い」
2002/1/16(Wed)18:44 - 風城空牙 - Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 5.01; Windows 98) - 15840 hit(s)

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「な、hyde」
ぼんやりと、窓から見を乗り出して青空を眺めていたhydeに、tetsuがそっと呼びかけた。
「何?」
口元に緩く笑みを浮かべて、応える。空から視線は外さずに。
そんなhydeの華奢な背中を、tetsuが優しく包み込んだ。
「どぉしたん?」
困ったようなhydeの声に、tetsuは瞼を伏せ、静かに言った。
「俺は、ここに居るからさ。
星夜とか、kenちゃん、ゆっきーを、街まで帰してやってくれん?
それにあの二人・・・・蝶と愛羅も。元に戻して、ちゃんと自由にしたってや。何や、可哀想や。あんな人形みたいになってもうて」
お前かて望んではおらんやろ?と小さく呟いて、tetsuは薄く目を開いた。
彼の黒く純粋な瞳は、その優しさゆえに傷付いているように見えた。
その所為か、hydeは困惑した。
「tetsu・・・・ええの?ほんとにそれでええの?」
首だけ動かしてなんとかtetsuと目線を合わせる。
その口から漏れ出る言葉は、行かないで欲しいという想いとは裏腹に、まるでtetsuにここに居るな、と言っているかのようなものだった。
それに一番驚いているのは、他ならぬhyde自身。
『何で・・・?俺は、tetsuに一緒に居て欲しいはずやのに、何でこんな事言ってしまうんや?』
そんな胸中の戸惑いを見透かしたように、tetsuはふっと微笑を浮かべた。
「ええの?そんな事言うたら、俺は星夜達と一緒に帰ってまうで?」
「やっ・・・ダメ!そんなの、ダメや・・・行かんといて!!」
反射的にそう叫ぶ。
同時に、胸の奥に不安を押し込もうとした。
その刹那。
hydeの脳裏に星夜の言葉が蘇った。

「そんなの、貴方の勝手じゃない!tetsuの事なんて、これっぽっちも考えてないじゃない!」

「hyde?」
腕の中で細かく震えだしたhydeに、tetsuが心配そうに声を掛けた。
だが、hydeはまるでその声が聞こえないかのように、虚空を見つめている。
いや、確かに聞こえていなかった。
tetsuの声も、風の吹く音も。
ただ、胸の内に湧き上がった疑問の答えを探していた。
『ここに居て・・・tetsuは、ほんとに幸せなんか?』
漂う沈黙を破ったのは、hydeの震える声。
「tetsu・・・・俺・・・・・」
tetsuの腕を緩く掴んで身を離すと、hydeはベッドに腰掛けた。
そのまま押し黙ってしまったhydeを、tetsuは真直ぐに見つめた。
「・・・・俺、tetsuのこと、幸せにしてあげたいねん。苦しんだりしなくていいように」
下を見たまま、ぽつぽつと言葉を紡ぐ。
「けど・・・ここに居てもらうって事は、tetsuが望んだことやなくて俺が」
「煩いわ」
静かに言って、tetsuはhydeの前に跪いた。
「いいって言うてるやんか。hydeの傍に居るのは俺が望んだ事や」
優しくあやすようなtetsuの言葉に、hydeは何も言えなくなってしまう。けれど、答えの出ない疑問と、もう一つ、湧き上がって来た思いは消えなかった。


「・・・・舞さん、あの二人どうしよう・・・」
星夜は頼り無く呟いた。
星夜、ken、yukihiro、それに舞の四人は、hydeの寝室の扉の見える所まで来ていた。
が、入り口に蝶と愛羅が立っている所為でそれ以上近付けずにいた。
「・・・なぁ、強行突破はどや?」
「ken君、あの扉をどうやって壊すのさ?」
星夜の後ろでは、kenとyukihiroが無責任かつ物騒極まりない会話を繰り広げている。
舞は舞で、
「どうしようかしらねぇ」
とかおっとりと呟いて口元を押さえている。
『もう、自分しか頼れない・・・・・』
・・・星夜はかなり追い詰められていた。
と、その時、
「・・・きゃああああああっ!!」
広い廊下に、二人の少女の甲高い悲鳴が響き渡った。





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