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【2388】第八話 判の項
2001/12/20(Thu)16:44 - 蝶(パピヨン) - Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 5.0; Windows 98; DigExt) - 11659 hit(s)

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・・・みなは無事か?
まだ闇を払いきれていないではないか!こんなにも周りが黒い
体が鉛のように重い・・重い・・・
「マイ殿!」
式神・・、いかん私はこのまま動けそうにない・・・どうか王子たちを・・・
「戻って来い!マイ殿!!」
無力だな私自身・・・
?この生ぬるい鉄臭い液体は・・・
その時マイの手に真っ赤な血がべっとりとついていた

血液!まさかっ!?そんな事・・・・
あぁ・・ああぁ・・・っっ!!!
tetsu様!!hyde様!!
今まで闇しか映していなかったマイの瞳に真っ赤な海原が現れた
全てが血の海になりtetsuもhydeもkenもyukihiroも全ての生き物が場に付し血まみれになっているのだ
・・・なんてこと・・・kenもyukihiro様も・・・
私は守りきれなかったのか・・、あぁ・・、こんな命助かっても意味がない・・・
こんな現実私にはいらない・・・うっうぅ・・・・
動かない体に瞳は涙ばかりを溢れさせる

「あなたの手は動く!」
式神、私は助かろうなんて思わない
「動く!!戻ってくるのだ!!!」
なにを言うのだ、もう私など必要ない
「いたしかたない・・
少々手荒らだが貴方を開放させないと」

どうした式神・・なに・・額が熱い・・・っ
ドクン・・ ドクン・・ ・・ドックン・・ ドック・・ン・・――――

ズンッ

「くあっっ」
体中に何かが入り込むような感覚が走った
全身が反り返り、目は完全に見開き、その瞬間マイは声を放つ事ができた
「しかと前を見据えよ」
「式神?」
声が鮮明に聞こえたかと思うと今まで目の前に広がっていた血の海はなく、式神の顔だけが自分をのぞきこんでいるのであった
「なぜ、そこに?」
マイは横たわったまま式神に問い掛けた
涙の跡はまだ渇いていない

「しっかりしろ、幻術にはまっただけだ」
式神はマイの手を引いて起き上がらせた
マイの体は軽くなりどこにも傷らしいものは見当たらない
それどころかあたりは壊れた所もなくtetsuとhydeも自分の側で気を失っているだけだ
「どういうことなんだ・・・」
まだ少しくらくらとする頭のなかでことの事態を整理しようとした
「幻術だ、まぼろしといった方が簡単か?」
そんな時マイを支えていた式神が口を開いた
やはり彼は涼しい顔をしている

幻術だと?くそっまんまとハメられたか
「式神、お前は何で平気なのだ」
「ははっ、俺は鬼だからだ心は操れん」
「それがいまいちわからないのだよ
まぁ、みなが無事でよかった
私もまだまだ力があまいということだな」
悔しそうに歯を食いしばるマイの肩を式神は軽く叩いた

そして話を続ける
「あの女を覚えているか?」
「あぁ、黒装束の奴だな」
「マイ殿はあれの術にはまったのだ
他のみなもそうだろう、俺も最初は気づかなかった」
「え?」
「気づいたのはあの奇妙な猫どもがtetsu様の守護獣に切り裂かれた時だ
奴らには感情がなかった
それどころか俺と似たものだと感じた」
「似たものとは?」
「式神のようなものだ、なにかに猫どもの精神を移し操ったと考えればいい」
「猫は操られていたんだな・・・
それにしてもあの女はなぜ留めを刺さず幻術にしたのだろう?」
「そこが俺にもわからん
だがあの女、tetsu様を集中狙いしていた」

マイと式神の会話は続いた
あの女はなにが目的だったのか?
そして不思議な歌を残して消えた
あとに残るのは謎ばかりだ

と、突然男の子の声が聞こえてきた
「皆さんどうしたんですか!!?大丈夫ですか!!?」
少年は無造作に伸ばした髪に、タンクトップ、黒いカーゴパンツを履き、辺りを見回しうろたえていた
「え?え?どうしたんだろう・・・」


「なんと、我々のほかにも幻術から逃れられたものがおったか」
マイはその少年を見つめ微笑した
自分達の他にもあんな悪夢を見ずに助かったものがいて安心したのだろう
「あれはsakuraではないか・・・」
「ん?sakuraというのかあの少年は
お前はなぜ名前まで知っておるのだ?」
「あれは砦の王の息子だ」
「なに、砦の王の息子?
しかしあれの名は椿ではなかったか?
それに女で一人っ子だ」
「主街道の砦の王に仕える家政婦の子供だがどうしたものかな、俺はあいつが息子だと思えて仕方がない」
誇らしげに笑う式神にマイは嫌悪感を覚えた

砦の王と言うのはこの主街道を仕切る門番の事だ
その砦の王には愛娘の「椿」という子がいる
マイの言うとおり一人っ子だ
本来ならば椿もこの式典に参加するはずなのだが彼女は病弱でめったに人前には出られないらしい

「おかしな事を言うな」
繭をしかめたままマイは式神に言った
式神の言う事はいまいち良くわからない
「おかしくなんてないとそのうち思うようになる
sakuraの魂がいっているのだ、間違いない」

「あのっ!大丈夫ですか?」
そんな話し声が聞こえたのかsakuraはマイと式神を見つけ走ってきた
「わっ!王子様まで!!しっかりしてください」
彼はマイと式神の横で横たわる2人の王子を見つけ驚きの声をあげた
それと当時に2人の肩をユサユサと揺り始め泣きそうな顔をしている
「しっかりしてください王子様ぁ」
「ん・・っ」
するとtetsuは自分の体の異変を感じたのか揺られながら小さくうなった
その様子を見て安心したのかsakauraは腰を抜かしヘタヘタと座り込んでしまい
「生きてるぅ・・・」
と気の抜けた声をだした

「大丈夫だ、王子達は生きてるよ
お前も良く助かったな」
座り込み涙目のsakuraはまるで子犬のように見えた
そんなsakuraがいとおしく思えマイはsakuraの頭をわしゃわしゃとなでながら、大丈夫だよと微笑んだ
「さぁ、みなを起そう」
マイは式神の手を取り立ち上り、幻術を解こうとしたが上手く力が入らない
(なぜだ、さっきの術の余韻がまだ残っているのか?)
次の瞬間sakuraがマイの手を握ると、ブワッと全身に風が舞い口をついて呪文が出てきた
sakuraが握っている手と反対の左手をかざすとそこからオーロラのように無数の波が広がり一人一人を包んでゆく
すぐに目覚める者、なかなか目覚めない者、さまざまだったがsakuraが手を握った事で力がましたのには違いない
(この子供・・・)

マイがsakuraを振り返ると、sakuraの体はなぜか半透明に透け消えかかっている
「やだ・・、ねぇお姉さん!助けて!!まだ行きたくないのにっ!!」
透明に形を無くしてゆく自分の体を見つめ振り乱しながら小さな少年はさけんだ
マイは何がなんだかわからずに目を見開くばかりであった
「お前・・体が透けて・・・どうした!これはなんだ!!?」
「やだ!や・・だ・・―――――――――」
マイがsakuraの体を掴もうとする前にすでに体は消えていた
つかもうとした手は宙を掴んだ
あっけにとられたマイはそのまま立ちすくむしかなかった
少年のいたところにはチリひとつのこってはいない――――――――



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