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【2260】第一話 雪の項
2001/11/21(Wed)18:38 - 蝶(パピヨン) - Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 5.0; Windows 98; DigExt) - 11853 hit(s)

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乾いた土にしんしんと淡く光る雪が降り積もる
それは少しだけ青みを帯びていてまるで海などを見ているような感覚を覚える
まだ誰も足を踏み入れた事のない冷たく柔らかな海原にむじゃきに足跡を残している子供の姿があった

歳は六才ほどであろう
現代ではあまり見られない成りをしていた
言ってみれば平安時代のような身形で、スゥッと伸びている袴を雪でぬらしているのだ
この美しい海原の雪をわざわざ汚しにかかるなど純粋と言うものは少し、怖い気もする

むじゃきに足跡を残す子供に、これまた同じ歳のくらいと思われるかわいらしい女の子がなれない雪の上をよたよたと歩いてくるではないか

「hyde様、hyde様、お父様がお呼びです」
少し息を切らせながらは、足跡を残す子供に言った
少女は本当に歳相応といったかんじで、ふっくらとした頬を寒さで赤らめている
急いできたのか、後ろで一つに結ってある長い黒髪を少しだけ乱していた

「・・・うん。わかった、君はすぐに戻りなよ」
hydeと呼ばれた少年は溜息をつき、雪を踏むのを止めて斜め後ろに立つ少女に振り返った

「はい・・・、でも愛羅はhyde様と一緒に行きたいのです」
hydeと目が合うとすぐ恥かしそうにうつむき小さな手でhydeの袴を掴んだ









古い屋敷内がバタバタとせわしなく動いているようだ
人々が行き交い、誰かを探している

「hyde様!!hyde様!!どこにおられます!!」
若い女官が声を張り上げていた
同じようにhydeを探す声が四方から聞こえてくる
平安を思わせる造りの屋敷は普段静かで、どちらかと言えばピンと糸が一本張っているような空気があるのだ

なぜ今日はこんなにバタバタとしているのかと言うと“主街道”というところで三年に一度開かれる式典があり、それに参加するはずのhydeを探していたからだ
“主街道”とは何か?その説明は後でするとして
式典開始時刻前に式場に間に合うようにするにはこの場所を早めに出ておかなければならない、なのに今日に限ってhydeの姿が見当たらない
縁の下を覗こうとも、押入れを引っ掻き回そうとも出てこないのである

「hyde様!!出発の刻は近いのですよ!!hyde様!!お父上もお呼びです!!」

そんな叫びにも似た声を遠く聞くと、hydeは愛羅の手を引き屋敷に向かい少しずつ歩きはじめた

「寒いだろう?」
「いいえ・・・」
愛羅は幼いながら恥じらいの表情を浮べ、hydeの手と自分の手が繋がっているのを嬉しく思った
屋敷の縁側までくるとhydeは目をつぶり、小さく口の中で何かを言うと自分の手を目元まで上げながら右から左に流した
すると、触れてもいないのに縁側の木彫りの戸がガタンと音を立てて開いたのだった

「スマナイ」
そう愛羅に言うとhydeはスィと石段を登り、縁側に立って「ココだ!!」そう、中に向かって言い放ち消えていった
愛羅はhydeの能力を不思議とは思わなかった
のちに自分もそんな能力を持つのだと解っていたからなのかもしれない
それどころか先ほどよりも、もっと顔を赤らめて目の前で起きた事に興奮しているようだ

「愛羅は・・・、愛羅はhyde様のいいなづけでいる事を幸せに思います」
両手を頬にやり、先ほどまで繋がっていた手のひらを暖かく思うのだった







「ココにおります」
大広間であぐらをかき機嫌悪そうに座る男の前にhydeはずぃと出た
「私はココです、とうさま」
父親らしき男は日本人離れした顔立ちの美しい人だ

「ふぅ・・・、ずいぶん手間をとらせるのだなhydeよ」
「申し訳ありません」
冷たく温かみのない言葉はためらいもなくhydeへ降り注ぐ
hydeは父親にも似た美しい顔立ちをしていた
幼くても見つめていればまやかしにかかったようになるほど見入ってしまう

「明日は主街道での式典があると知っての事か?
今の時間から出発せねばならぬと言うのに・・・」
質問と同時にhydeは父親の前に座り込む
「・・・」

「この式典には世継ぎであるおぬしが参加するということは決まっておる事なのだぞ」
「はい」
力なくhydeはうなずいた

「昔からの決まりごとじゃ、しかと役目を果たされよ
この国の後継ぎはお前だhyde、甘えるでないぞお前はお前でやらなければならぬ事がたくさんあるのだからな」
「しかし・・・」
思い余ってhydeは身を乗り出した
しかしそれも恐ろしいこの声にかき消されてしまう

「口答えをするのか!この父に!!」
「・・っ」
「お前にとって私の存在は絶対だ、逆らうなどもってのほか
急いで支度をし、式典へ言って参れ他の三つの国も王子殿も居られることだしな」
hydeはうつむきながら唇を強く噛んだ

「わかったのか!!!!」
「・・・は・・い」
「それでよいのだ」
地をも割れるような声で怒鳴り、hydeの返事を聞いて優越にひたったのか
唇を緩め微笑をしていた



























そのすぐ後に、hydeはお付きの者と愛羅と一緒に星の道(スターロード)を渡り主街道へと急ぐ


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